ベルリンへ

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太田豊太郎は、若くしてその才を認められた、国家の期待の星だった。 明治の世、近代化を急ぐ日本は、優秀な若者を、こぞって西洋へと送り出していた。豊太郎もまた、そのひとりだった。幼いころから神童とうたわれ、官立の学校を、つねに首席で卒業してきた彼は、ある省の役人として、法律と政治を学ぶために、はるばるドイツのベルリンへと留学することになったのである。 豊太郎は、母の期待を一身に背負っていた。早くに父を亡くした彼にとって、母は、たったひとりの肉親であり、また、すべてだった。母は、豊太郎が立身出世して、家を再興することを、何よりの望みとしていた。豊太郎自身も、その望みに応えることを、生きる目的としてきた。彼は、自分の人生というものを、ただの一度も、自分のものとして考えたことがなかった。 ベルリンに着いた豊太郎は、その都の華やかさに、目を奪われた。広い大通り、立ちならぶ壮麗な建物、行き交う着飾った人々。そのすべてが、彼がそれまで知っていた

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