吾輩は猫である

Arwy Official

吾輩は猫である。名前はまだ無い。 どこで生まれたのか、とんと見当がつかない。なんでも薄暗いじめじめした所で、にゃあにゃあ泣いていたことだけは覚えている。吾輩はそこで、はじめて人間というものを見た。あとで聞くと、それは書生という、人間のなかでもいちばん乱暴な種族だったそうだ。 この書生というものは、ときどき吾輩たち猫をつかまえて、煮て食うという話だった。けれど、そのときはなんという考えもなかったので、別段おそろしいとも思わなかった。ただ、彼の手のひらに載せられて、すうっと持ち上げられたとき、なんだかふわふわした、たよりない心持ちになっただけである。 しばらくして、吾輩はその書生に、どこかへ捨てられてしまった。気がつくと、知らない笹原の中に、ひとりぼっちで放り出されていた。腹は減るし、雨は降ってくるし、吾輩は心細さのあまり、ただにゃあにゃあと泣くしかなかった。 そうして、なんとか人の住む家の軒先にたどり着いたところを、吾輩はある家の

Find your next chapter — and the people in it.

Free to download. Read, write, and match today.