先生の過去
Arwy Official
先生の手紙は、長い告白だった。それは、これまで誰にも語られなかった、先生の若き日の物語だった。 先生は若くして両親を亡くしていた。財産は叔父に託されたが、その叔父に、信じていた財産の多くをだまし取られてしまったのだ。少年だった先生は、もっとも近しい肉親に裏切られた。この出来事が、先生の人生に最初の深い傷を刻んだ。「人間は信用できない」——その思いが、若い先生の心に根を下ろした。 故郷を捨てて東京に出た先生は、ある下宿に身を寄せた。そこは、夫を亡くした未亡人とその一人娘が暮らす家だった。先生はやがて、その娘——「お嬢さん」に淡い恋ごころを抱くようになる。叔父に裏切られて以来、人を信じられなくなっていた先生の心に、はじめて温かな光がさしたのだった。 そんなある日、先生は親友の「K」を、その同じ下宿に住まわせることにした。Kは厳格な家に育ち、学問と修養に身をささげる、まじめで一途な青年だった。家庭の事情で苦しい立場にあったKを、先生は…